こんにちは。東京エレクトロンデバイス アメリカの間中です。よろしくお願いします。
MODEX は MHI が主催する 2年に一度開催されるマテリアル ハンドリングやサプライチェーン、物流業界をターゲットにした米国最大規模の展示会及びカンファレンスで、今年もジョージア州アトランタのワールド コングレスセンターで開催されました。
MODEX を主催する MHIは、1945年にピッツバーグで設立された米国のマテリアルハンドリング、ロジスティクス、サプライチェーンの業界を代表する非営利業界団体です。800社を超える企業会員はマテリアルハンドリング、ロジスティクス、サプライチェーンの機器メーカー、システム、ソフトウェアのメーカー、コンサルタント、システムインテグレーター、物流プロバイダーなどで構成されています。MHI は2年毎にアトランタで開催される MODEXの他、MODEXと交互に2年毎にシカゴで開催される ProMat (自動化をテーマにした展示会 Automateと同時開催) も主催しています。


今年の MODEX 2022は、開催者の MHIの発表によると参加者は 37,000人強とのことなので、2年前の 50,000人よりも減っているようですが、2年前の会場は特に前半の 2日間はかなり人が多かった印象なので、今年は展示会場を回るにはちょうどいい込み具合だったのかも知れません。出展社数も今年は 850社強で、2年前の 900社強よりも若干減ってはいるようですが、会場の広さを考えると前回との違いはほとんど感じられません。パンデミックの影響で海外からの参加者は少なく、今回はほとんどが北米内からの参加者のようです。
前回はパンデミック直前の2020年3月に開催されましたが、CDCのおひざ元のアトランタでの開催ということもあり、会場はマスク着用こそ推奨はされていましたが常時消毒が行われる徹底ぶりには驚かされました。展示会場の広さはおよそ幕張メッセの 6ホール分で、米国内を中心に 900社以上が出展、各種セミナーも 150セッションを超えていました。展示会場内のいくつかのエリアにフード エリアが設けられており、常設のショップに加えてフードトラックが入っていたり、会場を出ることなく食事ができるのは米国の展示会らしい開催方法です。
今回の MODEX 2022の会場のビデオや写真を見て一番驚いたのは、ほとんどの参加者がマスクをしていないことでした。展示会のサイトには “Health & Safety” というセクションが設けられ、米国アメリカ疾病予防管理センター(CDC) のガイドラインなどが説明されており、参加者はマスクを着用することを強く推奨するとは書かれていますが、展示会場やキーノート会場などの映像を見る限り、ほとんどマスクを着用している人を見かけませんでした。
MHIが公開している開催期間中のビデオや資料を見ると、今後3~5年後に主流になると思われる技術にも注目は集まってはいましたが、サプライチェーンにおける今日、明日の課題を解決するソリューションにも注目が集まっていたように感じました。例えば米国市場においてパッケージング ソリューションを提供する最大手の一社 WestRock社は梱包箱に最初から RFIDラベルを埋め込んだ梱包材を会場で紹介していました。
またRFID技術に関するショートビデオは MODEX 2022期間中の再生回数トップ10 に入っていました。アクティブ タイプとパッシブ タイプの RFID技術を用途に応じたケースで紹介しています:
「RFID Tags」(3:28)
Todd Farwell, Innovation Architect and Global Deployment Champion for Caterpillar Inc., discusses RFID tags and the potential they have for revealing insight into your supply chain.
キャタピラー社のイノベーション アーキテクト兼グローバル デプロイメント チャンピオンのトッド・ファーウェル氏が、RFIDタグとそのサプライチェーンにおける可能性について語ります。
MODEX の開催期間中、毎朝キーノートが行われますが、今年のキーノートは技術よりも人材をテーマにした内容を中心に、最後のキーノートには元 NBAプレーヤーの Shaquille O’Neal氏が登場、さぞ会場は盛り上がったものと思います:
- [3/28 Mon] Erika Alexander, Chief Global Operations Officer for Marriott International
- [3/29 Tue] Dr. Sanjay Gupta, Chief Medical Correspondent for CNN
- [3/30 Wed] “MHI Annual Report”, John Paxton and Thomas Boykin, MHI CEO | Deloitte
- [3/30 Wed] Shaquille O’Neal, NBA Hall of Famer

展示会場内のセミナー会場で開催された無料セミナー数は 170セッションを超えていました。セミナーは 7つのトラックに分類されて開催されていました (カッコ内の数字はそれぞれのトラックのセッション数):
- Transportation, Distribution and Warehousing (53)
- Manufacturing, Planning and Sourcing (3)
- Data Capture, Analytics, and Information Management (10)
- Automation & Robotics (80)
- Sustainability and Risk Management (4)
- Workforce and Labor (4)
- Emerging Supply Chain Technology (12)
MODEX で楽しみにしているトピックの一つが「Innovation Awards」です。今年 Innovation Awards を受賞したのは次の 3社です:
- Best New Products: “Remote Operation Platform Logistics”, Phantom Auto
- 2017年にサンフランシスコに設立された、テレオペレーション技術開発を中心としたソフトウェア開発ベンチャー。フォークリフトやトラックなどのロジスティクスサービス業務用車両を安全に遠隔操作する技術を提供。
- Best IT Innovation: “On-Demand Labor Marketplace”, Veryable, Inc.
- 2016年にテキサス州ダラスに設立された、米国中南部を中心にオンデマンドで労働力を確保するマーケットプレースを運営するベンチャーで、労働力を生産量の増加に応じて確保し一定のコスト構造を維持しながら規模を拡大するためのサービスを提供。
- Best Innovation of an Existing Product: “Skateloader System”, Ancra Systems B.V.
- 主に生産工場と物流センター間のシャトルサービスを目的としたトラックの自動荷下ろし・荷積みシステムを開発するオランダの企業。スケートローダー システムやカーペット システム、チェーン/ベルトコンベア システム、ローラートラックなどを提供。
ここベイエリアのベンチャーが Innovation Awards を受賞したのは嬉しく思います。
これは個人的な印象ですが、最近倉庫内を自律移動する AMR (Autonomous Mobile Robots) は倉庫内の他の自動化ソリューションとの組み合わせないし自動化ソリューションの一部として展開される傾向が強くなってきているようですが、効率的にモノを移動させるという意味では人が遠隔から操作するテレオペレーションが最近注目度が上がってきているように思います。常に遠隔操作するのではなく、自律的に動作できる場合には自律運用させ、必要に応じて人が操作するといったある種ハイブリッド的な運用が、現時点では短期間で効果を得られるソリューションの一つになってきているように思います。
今年はさすがに COVID-19の影響を受け、出展社数は前回よりも若干少ない 850社強でしたが、カテゴリー的には前回とほとんど変わりはありません (カッコ内の数字はそれぞれのカテゴリーの出展社数):
- Attachments – Overhead & Lifting Equipment (32)
- Attachments – Trucks & Mobile Equipment (27)
- Automated Storage/Retrieval Systems (83)
- Automatic Guided Vehicle Systems (88)
- Automatic Identification Products (50)
- Autonomous Mobile Robots and Drones (82)
- Artificial Intelligence (53)
- Batteries/Chargers/Motors/Fuel/Alternative Fuel Systems (48)
- Below/Hook Equipment (i.e. sings; lifts; magnets) (6)
- Carousels (16)
- Casters, Wheels & Tires (18)
- Cleaning Systems & Equipment (14)
- Computer Hardware and/or Software (107)
- Consulting & Professional Services (84)
- Containers & Dunnage (29)
- Controls and Controlling Devices (58)
- Conveyors (99)
- Cranes (28)
- Decking & Flooring (22)
- Floor Trucks and Carts (38)
- Hand Lift Trucks (20)
- Hoists (11)
- Hydraulic & Electrical Components/Controls (25)
- Labels, Labeling Devices & Tracking Solutions (74)
- Lift Products (43)
- Lift Trucks, Personnel & Burden Carriers (38)
- Loading Dock Equipment (58)
- Mezzanines (34)
- Modular Drawer Storage (13)
- Monorails & Monorail Systems (22)
- Order Picking Fulfillment & Delivery (135)
- Packaging & Unitizing Machinery & Materials (60)
- Pallets & Palletizers ’73)
- Parcel, Freight & Cargo Distribution (40)
- Plant/Facility Equipment (98)
- Protective Guarding (39)
- Publications & Associations (7)
- Racks (55)
- Radio Frequency Identification & Data communications Equipment (49)
- Remote Control Equipment (16)
- Reverse Logistics Services (24)
- Robots, Industrial (97)
- Safety Equipment & Ergonomics (197)
- Scales & Weighting Equipment (18)
- Shelving, Workstations & Plant Furniture (39)
- Simulation Software & Services (38)
- Sortation Equipment (63)
- Supply Chain Execution Systems ’75)
- Supply Chain Security (27)
- Sustainable Facility/Recycling Equipment (17)
- Systems Integration Services (195)
- Transporation Providers (15)
- Third Party Logistics (32)
- Vertical Lift Module (27)
- Vertical Reciprocating Conveyors (16)


3日目のキーノートに登場した MHI CEO の John Paxton氏及び Deloitte のアナリスト Thomas Boykin氏は毎回恒例となっている “MHI Annual Report” について報告・ディスカッションが行われました。


ご存じの通り、サプライチェーン業界は COVID-19のパンデミックの大きな影響を受けています。MHIの会員企業を中心としたアンケート結果が “MHI Annual Report” では紹介されていますが、サプライチェーン業界の課題のトップにはサプライチェーンの維持や労働力の確保、物流時間の短縮などがあげられています。パンデミックの影響で離れてしまった労働力は、今でもまだパンデミック以前の 6割前後しか戻っていなく、今後さらに増えることが予想される物流量への対策が急務となっているようです。
アンケートにおいて注目度の高かった技術分野は次の通りです:
- 産業用IoT (IIoT)
- クラウド コンピューティングとストレージ
- ブロックチェーンと分散型台帳技術
- ロボティクス & オートメーション
- ウェアラブル技術とモバイル技術
- 自律走行車・ドローン
- 3Dプリンティング (Additive Manufacturing)
- 予測分析 (Predictive Analysis)
- インベントリとネットワーク最適化ツール
- AI技術
現在すでにこれらの技術を導入している企業はクラウドコンピューティングの 40%がトップで、RFID や音声認識、バーコードなどのセンサーやデジタルID技術は 31%、インベントリーやネットワーク最適化ツールの導入は 28% となっており、今後 5年間でこれらの技術の導入は倍以上に伸びることがアンケート結果に表れているのは興味深いです。
またこのアンケートで興味深いのは、サプライチェーンのリーダーが新たな技術を導入する際に投資を正当化する明確なビジネスケースの欠如を最大の課題として挙げている点で、これは特定の技術に対してではなくすべての技術に対して最大の課題になっています。
ビジネスケースを作成することはコンセプトは複雑ではありませんが簡単ではないと思います。ビジネスケースを作成する際には、プロセスのすべてのステップを効果的に実行するために必要なすべての条件・状況を考慮することが求められます。MHI Annual Report では次のようなプロセスを提案しています:

以上、MODEX 2022 を簡単にレポートさせていただきました。何かの参考になれば幸いです。