年明けのイベントと言えばラスベガスで開催される CES に注目が集まりますが、リテール及びサプライチェーン業界では毎年年明け 1月中旬にニューヨークの Jacob Convention Center で開催される NRF Retail’s Big Show に注目が集まります。
「NRF Retail’s Big Show」は National Retail Federation (全米小売業協会) が開催する展示会兼カンファレンスで、今年は 1月15日(日)~17日(火) の3日間の日程で開催され、1,000社を超える出展者と 200近いセッション、4万人を超える来場者を迎えて開催されました。最近は小売りのデジタル化が大きく取り上げられていますが、今年は新型コロナ禍で生活が大きく変化したコンシューマーの対応が迫られているリテールやレストラン、流通の「BREAK THROUGH」がテーマとなっていました。eCommerce が広がりを続ける現状を踏まえ、リアル店舗の役割やデータ活用、さらにはメタバースやドローンによるデリバリー技術の影響など、幅広いテーマが取り上げられていました。

注目のセッションは米McKinsey & Company の Sajal Kohli氏と北米生鮮食料品スーパー Sprouts Farmers Market社の Jack Sinclair CEO による「North American grocery retailing trends for 2023」で、Kohli氏は 2023年の Grocery Retail市場において、① 規模や価格、デジタル化や商品の独自性による競争力強化、② 健康ニーズへの対応、③ デジタル技術を用いた顧客満足度の向上や人材不足の解消、④ 持続可能性への取り組み強化、そして ⑤ 他社とのパートナーシップの 5つの課題を指摘。また Sinclair氏はデジタル技術を活用するにあたり、すべてを自社で行うことはリソース的にも時間的にも費用的も難しく、スタートアップやソリューション プロバイダーなどとのパートナーシップの重要性を指摘されていました。特にコンシューマー一人一人の好みや購買状況に合わせて柔軟に対応するパーソナライゼーションが販売事業継続の重要なキーワードとなってきている状況においては、積極的にパートナーシップを活用することが重要となってきています。
また NRF においても Amazon の存在は大きく、今年の NRF で注目を集めていたのが Cashierless ソリューション「Jut Walk Out」技術でした。リテール事業において会計レジにかかる人手とコストは大きな悩みであり、利用者にとってもレジ待ちは大きなストレスとなっています。米国ではセルフレジも普及してはいますが、会計せずに商品を持ち去る人は後を絶たず、レジ処理を改善する決定打はまだ見つかっていないのが現状です。
「Just Walk Out」は Amazon がリテール向けに開発した技術で、顧客のストレスを限りなく少なく買い物体験を提供することにフォーカスしています。カメラや生態認証技術を組み合わせ、利用者が手に取る商品を自動認識し決済処理も自動化するソリューションとなっていて、利用者はレジを通ることなくそのまま店舗を出ることができ、店舗側も決済に人手をかけずに無人決済を実現します。サンフランシスコのダウンタウンにも「Just Walk Out」技術を使ったコンビニ「Amazon Go」が何カ所かありますので、まだ「Just Walk Out」を体験していない方はぜひ足を運んでみてください。


個人的にはリテール・サプライチェーン業界をターゲットにした「STARTUP ZONE」や AI・AR・顔認識など最新技術を取り上げる「INNOVATION LAB」などを毎年楽しみにしています。